サイトマップ    電話お問い合わせ  
    
The Hokkaido Medical Society
北   海   道   医   学   会
 
ウィンドウを閉じる
第59回北海道医学会市民公開シンポジウム
「気候危機とその健康リスクにどう立ち向かう?〜熱中症や気候変動関連の健康被害を防ぐために〜」
参加者から寄せられた質問&講演者の回答(24.10.30)

質 問回 答
北海道と千葉県の意識の違いなどが非常に興味深く感じます。冷房自体の環境負荷を懸念している背景もあり、北海道では特に冷房をつけていても作動に躊躇するケースも高齢者世帯を中心に多いのではないかと懸念します。そういった意識の違いも影響あるでしょうか。 ありがとうございます。今回の私どもの調査は介護施設を対象にしておりましたので、冷房機器の設置にまずは課題があることが示されました。ご指摘くださったような、冷房が設置されていても使用を躊躇するという意識は、とりわけ在宅の高齢者にみられるということが、自治体や介護施設の職員から挙げられていました。今後はそうした意識を踏まえたうえで、熱中症予防行動の啓発を実施する必要があると考えます。
北海道の熱中症対策は、具体的に自治体、大学、マスコミではどのような対策ととっているのでしょうか 各自治体では、予防のための知識啓発や熱中症に関する各種アラートの発表状況をホームページ上で示すなどしています。また、マスコミも新聞等で夏季の熱中症特集などを組んでいるようです。大学では必要に応じてエアコンなど使用しています。
介護施設における熱中症の発生は、例えば2023年に北海道でどの程度、起こったのでしょうか?
救急搬送、死亡の別に分かれば教えてください。
さらに、熱中症が発生した施設があれば、今回のアンケートから得られた当該施設の特徴を教えてください。
ご質問ありがとうございます。介護施設における熱中症発生数全体の数は、発生場所別の詳細な統計がなくわからないのですが、私どもの調査では、2023年夏に熱中症が発生した施設は北海道で87件中20件(23.0%)、千葉県で62件中9件(14.5%)でした。熱中症が発生した施設では発生しなかった施設に比べて「入所者や職員が熱中症になる危険性を高い」と考えている割合が高かったです。発生件数が少ないこともあり、それ以外の施設の特徴として顕著なものはみられませんでした。今後、対象数を増やした調査で検討したいと思います。
学校や高齢者施設など、働いている人向けの対策はどのようになっているのか気になりました。 学校の生徒や高齢者施設入所者に対する熱中症対策は文科省や厚生労働省からの通知などで対応されているようです。学校や高齢者施設の勤務者を特定の対象者としているわけではありませんが、職場における熱中症予防についても厚生労働省が産業保健の観点で対策をしています。
参考: https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/manual.pdf
熱中症は暑熱による死の一部であるとありましたが、その他の要因についてまとめられた文献がありましたら拝読したく思っております。 暑熱により循環器疾患や呼吸器疾患死亡を増やすとする日本の知見は複数あります。たとえば、以下をご参考ください。
【総説】
「気候変動による直接的健康リスク―熱関連疾病・死亡―」本田靖
保健医療科学 2020 Vol.69 No.5 p.412−417
https://www.niph.go.jp/journal/data/69-5/202069050003.pdf

「公衆衛生分野における気候変動の影響と適応策」橋爪真弘
保健医療科学 2020 Vol.69 No.5 p.403−411
https://www.niph.go.jp/journal/data/69-5/202069050002.pdf

【論文】
「気温の死亡・救急搬送リスクに対する影響」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38060264/
「熱帯夜の影響」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37172196/
「気密性の高い住宅だから夏に暑い」というご認識が正しいのかどうか、疑問に思いました。 北海道などで見られる高気密の住宅は、冬季には室内の熱を外に逃がさない特性のため室温を保つ半面、夏季には日射により熱が窓から室内に入ると熱がこもり易くなり、結果として夏の熱中症リスクを高める可能性があります。
橋爪先生の「気候変動と医療」のスライドについて一点質問があります。
「気温と自殺」というスライドで気温が上昇すると自殺率も上昇するというお話がありましたが、何故気温が上昇すると自殺率が上昇するのでしょうか。天気が周期変化し、気温変化も大きい春や秋の方が、自律神経が乱れやすく、自殺率は上がるのではないかと、疑問に思いました。
気温と自殺リスクに関するメカニズムは、まだ十分わかっていません。暑熱曝露が既存の精神疾患を悪化させ、自殺リスクを高める可能性が示唆されています。わが国では、自殺者数は4−5月に多い傾向がありますが、自殺の原因は気温以外に多くの要因があるため、気温と自殺者数の季節性が一致するとは限らないのです。
新井先生のご発表について、熱中症対策でエアコンの設置が重要との視点ですが、クーラー機能、除湿機能のどちらを使用しているかについて、設定温度を含めた確認を施設への質問項目に加えると良いと思いました(意見です)。 エアコンの設定温度について、私どもの調査では、居室エアコンの平均温度が北海道で25.6℃、千葉県で26.2℃であり、北海道でやや低い傾向でした。本調査ではクーラー機能/除湿機能の別は尋ねておりませんでしたので、貴重なご意見をぜひ今後の参考にさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
脱水の方が少ない(ゼロ)との結果ですが、命に関わるような熱中症の場合、水分補給より体を冷やす方が先ですか? 脱水をあまり伴わない急激な熱中症の場合は水分補給より体の体温を下げる処置が優先されると考えます。
介護施設の居室のクーラー設置率の低さが驚きでした。これをあげるための方策があれば教えてください。 ご質問ありがとうございます。ここ数年で北海道の公立学校で冷房機器の普及率が向上してきているのは、道あるいは市町村が事業として予算を確保し後押ししていることが背景にあります。それを考えると、介護施設においても自治体によるコスト面の支援が一つの方策になると思います。一方で、私どもの調査から、千葉県の介護施設では、エアコンの劣化や故障への対応が課題になっていることを挙げており、コストの問題は設置時ばかりではないことがわかりました。環境省は、令和3年度にサブスクリプション(定額利用サービス)を活用したエアコン普及促進モデル事業を実施しその効果を検証しています。こうした民間事業者と連携したサービスは重要性を増してくると思われます。私たちも、引き続き調査データの収集と分析を通じて、熱中症予防に貢献できるよう努めていきたいと考えています。

ウィンドウを閉じる


© 2018 Hokkaido Medical Society